大阪地方裁判所 昭和42年(ワ)3228号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕ところで原告は右岡本車掌が原告が電車に乗車せんとしているのを確認せずに閉る扉操作を行なつたため、原告は扉で頭部及び右脚をはさまれ頭部打撲傷ならびに右足裂傷を受け、その後遺症のため物心に亘り、莫大な損害を蒙つていると主張するので判断するに、<証拠>を総合すると、原告は発車の合図の笛が鳴つてから右電車に乗車せんとして車内に足を踏み入れた瞬間そのすぐ後部に乗車していた岡本車掌の操作により自動扉が閉められたため、素足に草履ばきの原告の右足の指先が右の扉に狭まされ、その結果原告は右第三に打撲傷を受けた事実が認められる。原告はその際頭部も右扉に狭まれて強く打つたと主張し当公廷における本人尋問の際右主張に添う供述をしているが<証拠>によれば、原告はその際足の受傷を理由として岡本に対し強く抗議していたが頭部打撲の点については一言も述べていなかつたことが認められるから、この点に関する原告本人尋問の結果は直ちに信用し難く、他に原告がその際頭部をも強く打つたとの証拠はない。のみならず仮に右扉がしまる時扉が原告の頭部にも当つたにしても、原告本人尋問の結果によれば、原告は当時六三歳で可成りの高血圧症血圧(二二〇位)を病んでいたことが認められるから、原告がその後その主張するような症状に悩んでいるにしても、その原因が本件の接触事故によるものか或いは高血圧症によるものかについての資料は全くなく、当裁判所はこの点について到底心証を得るまでには至らないから、この点に関する原告の主張は肯認することはできない。
被告は原告の右足の負傷についてもこれを原告の過失により生じたものであるとして被告の責任を否定するが一般に通勤混雑時の電車の乗客が発車の合図の笛が鳴つたあとで電車に飛び乗らんとして扉に狭まれたような場合には、その過失責任は主として乗客にあるといえるがそのことからかかる乗客のないことの確認をしないで、閉扉操作をした車掌が直ちに自らの過失の責を免れることになるわけではないから、原告の前記受傷について被告会社の車掌の岡本順に過失がないとする被告の主張は失当である。(谷野英俊)